つつまれていた――というか、抱きしめられていた。
急すぎることで、ドクンドクンと心臓がうるさいくらいに高鳴っていて――息の仕方を忘れそうで。
胸の奥が苦しいくらいにギューッとなって。
ただ、好きな人の腕の中というのは、特別な場所なのだと、嫌でも思わされた。
時間にしたらほんの数秒のことだったけど。
頭にポンポンと触れた手が、合図だったのか?
スッと離れた敦君は、おやすみ――と。
そう言って、玄関から出て行ってしまった。
ひとり玄関で熱くなった頬に手を当てて――暫く玄関で立ち尽くしていた私。
だけど、ハッと言われたことを思い出して、玄関の鍵を閉め、テクテク歩いてリビングに戻った。
マグカップがふたつ置き去りのローテーブル。
それを手に、キッチンに入り、洗物を始めた。
ああ、そうだ――お弁当も洗わないと。
脳がいつもよりワンテンポ遅れて、視界がふんわりな感じ。
完全に恋愛呆けしたのか――それとも、今頃ワインが効いてきたのか。
ただ、抱きしめられた感覚を思い出す度に、頬がどうしても緩み、顔が熱くなる。
今夜は、漸くなにか動き出したような――晴れた気分に胸焦がされながら、幕を閉じた。


