彼は、理想の tall man~first season~


しかも、なんだかバカにされた気分になって。

先生には凄い止められたけど、高額だったレッスン費も勿体ないような気がして――やめてしまったんだ。


コンサートホールの張りつめた緊張感の中、弾くピアノも好きだった。

完璧と思えた演奏は――過去2回。

納得の行く出来の演奏。

それには結果もついてきたけれど――その箱の中の話で。


「個人競技って、モチベーション保つのが、難しいよね」

突然そう切り出した敦君は、どこか懐かしむような感じでフッと笑った。


大学で水球部と言っていた敦君は、幼稚園からスイミングに通っていたみたいで。

中学高校と水泳部だったと教えてくれた。


「記録勝負の世界だったかな。常にその限界点を追ってたけどさ、どこが自分の限界点が解ってるから」

「――はい」

「でも、白黒つけられないんだよね。トップで壁をタッチ出来ても、自己ベストと戦ってるから、レースで勝っても自分には負けで。逆にレースで負けてもさ、トップの奴に引っ張られる形で自己ベスト更新になれば、負けレースでも自己ベスト更新で、どっか納得出来たし」


自己ベスト更新でレースにも勝てれば、それが一番なんだろうけど。