そういう場所とは無縁のカップルの敦君と私。
今目撃したカップルのような、超イチャイチャな雰囲気になんて、まずなり得ないんだろうけれど――。
なにがどうなれば、あの雰囲気になれるのか。
この先、敦君と私は、ああいった雰囲気の仲になり得るのか。
今の状態では、全く想像も出来ない――。
ただ、あのカップルにだって、あそこまでの仲に至る過程はあったのだろうから、私もその過程を経れば――。
なんとかなるのかな?
誰か教えて欲しい。
スーツの袖にも触れない距離を歩く私と敦君に――誰かにどうすればああなれるのか、本気でアドバイスして欲しい。
でも今は2人きりで、話す相手はお互いしかいない訳だから、チャンスといえばチャンスでもある。
今を、この今の大事な貴重な時間を――。
「あの、」
「――ん?」
「今日って、帰ってからお仕事はしなくても、本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫にする為に、会社を出るの遅が若干遅れた」
「――え?」
「見回りチェックしてた総務の人間に見つかって、ちょっと小言を言われて、更にタイムロスしたけど、終わらせて来たから大丈夫だよ」


