彼は、理想の tall man~first season~


そういう場所とは無縁のカップルの敦君と私。

今目撃したカップルのような、超イチャイチャな雰囲気になんて、まずなり得ないんだろうけれど――。

なにがどうなれば、あの雰囲気になれるのか。

この先、敦君と私は、ああいった雰囲気の仲になり得るのか。

今の状態では、全く想像も出来ない――。

ただ、あのカップルにだって、あそこまでの仲に至る過程はあったのだろうから、私もその過程を経れば――。


なんとかなるのかな?

誰か教えて欲しい。

スーツの袖にも触れない距離を歩く私と敦君に――誰かにどうすればああなれるのか、本気でアドバイスして欲しい。


でも今は2人きりで、話す相手はお互いしかいない訳だから、チャンスといえばチャンスでもある。

今を、この今の大事な貴重な時間を――。


「あの、」

「――ん?」

「今日って、帰ってからお仕事はしなくても、本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫にする為に、会社を出るの遅が若干遅れた」

「――え?」

「見回りチェックしてた総務の人間に見つかって、ちょっと小言を言われて、更にタイムロスしたけど、終わらせて来たから大丈夫だよ」