彼は、理想の tall man~first season~


なんだかやりにくい――。

それに、昨日遅かったから寝不足で、どうも飲むって気分でもない。

抑え気味に飲んでいればいいかと、適当な会話に耳を傾けて、私はやり過ごしていた。

そんな中、小川さんはハイペースでビールのグラスを空けていく。

尚輝も敦君もそれなりのペースだけど、目下トークは仕事の話で――私は、徹底して聞き役に徹していた。


そもそも私がここにいるのさえ微妙とも思える。

ただ――他社の話はなかなか伺い知る機会はないから、その点ではうま味もあったけれど。


「妹ちゃんは、控え目系?」

突然話を小川さんから振られ、私はドキッとした。


「控え目系でもないっすけど、多少人見知りしますかね」

そんな私を見かねてか――尚輝がフォローしてくれた。

まあ、尚輝がいるからでしゃばらずにもいたんだけど。

恐らく私が小川さんタイプを苦手だと、尚輝は理解しているんだろう。


それからしばらく飲み続けていたけれど――

「尚輝は、まだ飲んでるか?」

ふいに敦君が尚輝にそう問い。

「俺、先に上がっていいか? 帰ってまとめておかなきゃならない資料があるから」


―――えっ?