「営業にはあんま関係なくなりそうな気もするけど、全社全部署の取り組みになっちゃったからな。暫くはこれに乗っかっるしかないけど、俺は家で仕事なんてしたくないし」
「家に帰ってまで仕事は、キツいっすよねぇ」
「それをやっちゃうのが中條だからなぁ。俺はマジに、奴のこと、尊――」
急に小川さんが口を噤むから、何事かと思った時。
「俺がなんだって?」
急に、私の背後から声が聞こえて、私は振り返った。
「お前、いきなり入って来るなよ! ビビるだろ」
「いや部屋聞いたらここだって言うから――あ、ビールひとつ追加でお願いします」
敦君の後ろに店員さんがいて、敦君はビールを注文。
そして、私に視線を寄越した敦君と目が合って――フッと微笑まれて、高鳴る鼓動に気付かないフリをして。
お疲れさまです――と、控え目に挨拶をした。
私の目の前の空いてる席に座る敦君は、今日も相変わらず爽やかな雰囲気を醸し出している。
その姿を見ただけで、ドキドキが治まらないのは――数日音信不通でもそれが想い人だからだと、視覚を介して脳が瞬時に認識したからなんだと思う。


