彼は、理想の tall man~first season~


仕事の話に私は完全に不要な気が――。

でも、普段の尚輝の知らない雰囲気も知れて、これはこれでちょっと好奇心が擽られる。

それに敦君の名前も出たから、否応なしに耳がダンボになっているし。

静かに2人の会話を耳に入れながら、尚輝も尚輝で色々とあるんだな――なんて他人事にも思っていた。


「ま、こんな手一杯の状況で、営業部の反対押し切って定時デーなんて設けて――今以上に混乱するのは目に見えてんのに、総務ってお気楽でいいよな」

「そうっすね」

「今回のこの定時デーも、経費削減だと」

「人件費ですか?」

「営業なんてまともに残業つけてるやつなんていねーだろ? 要は電気代をケチってんだよ」

部長の話じゃ、日割りと時間帯の電気代の計算までして、細かく数値出して来たらしいぞ――と。

聞いている私でもギョッとするようなことを言って、それには尚輝も驚いていた。


それが週1のペースで定時になればいくら――1か月だといくら――年間にすると、いくらの経費削減になるかみたいな。

そういうのを総務の人間が算打して、今のこの愚痴とも思える状況に陥っているんだろう。