お通しとビールが運ばれ、「お疲れ」なんて、軽くグラスを合わせ、早々に飲み始めた。
「たまには定時上がりも悪くないな」
「明日半端なく忙しいでしょうけどね」
「今日は、お前あの会社どうだった?」
「見積り次第でしょうけど、感触的にはいけそうな気がします」
「おー、だったら逃すなよ? お前あと2件決められたら、今月の指標値達成出来るだろ」
「そうですけど、やっぱり国内価格じゃ厳しいっすよ」
「まぁな――でも、それをなんとかするんが、俺たちの役回りだろ?」
「はい」
「貯金は稼げるだけ稼いでおけよ? 今がよくてもこれからどうなるか分からないから」
「肝に銘じておきます」
「頼むぞー? お前には、俺も部長も期待してんだから」
「ありがとうございます」
「中條も、お前には目かけてんだろ? あいつが目をかけるってことは、それだけの価値があるってことだし」
「え、そうなんすか? 敦さんて割と誰にでも、」
「いやいやお前解ってねーな。中條はお前の倍顧客持って、売上目標もお前の倍以上だろ? 超ハードなスケジュール組んでて、営業部員全員には、目なんかかけられねーよ」


