彼は、理想の tall man~first season~


そして――その視線に戸惑う私に。

「ねぇ、どっかで会ったことない?」

小川さんは、私にそう聞いてきた。


「美紗は、小川さんには、会ったことないと思うけどなー」

「いや、俺、どっかで会ったことある気がするんだけどなーどこだったかなー」


目を軽く瞑ると腕を組み、小川さんは天井に顔を向け、考えている仕草をした。


尚輝に頼まれて、飲み会の送迎をしたことは過去にあったけれど――送った人は、もっと割腹のいい人だったと思う。

小川さんに会った可能性があるとしたら――いや、恐らくないと思う。


「あー思い出せねー! 俺、美人は見たら絶対忘れない主義なんだけどなー」

「美紗、良かったなー、小川さんに美人だと思われてるぞ」


茶化す尚輝に、絶対見たことあると断言する小川さん。

私は再度小川さんの顔を確認したけれど、記憶にはない人だった。


――そのうち思い出すだろ、いや意地でも思い出してやる。

尚輝にそう言って笑う小川さんは、見た目軽そうな感じで、スーツは程よく着くずしている。

プレイボーイ系っぽい感じがするから、私はなんとなく視線は合わせないようにしてやり過ごしていた。