そして――その視線に戸惑う私に。
「ねぇ、どっかで会ったことない?」
小川さんは、私にそう聞いてきた。
「美紗は、小川さんには、会ったことないと思うけどなー」
「いや、俺、どっかで会ったことある気がするんだけどなーどこだったかなー」
目を軽く瞑ると腕を組み、小川さんは天井に顔を向け、考えている仕草をした。
尚輝に頼まれて、飲み会の送迎をしたことは過去にあったけれど――送った人は、もっと割腹のいい人だったと思う。
小川さんに会った可能性があるとしたら――いや、恐らくないと思う。
「あー思い出せねー! 俺、美人は見たら絶対忘れない主義なんだけどなー」
「美紗、良かったなー、小川さんに美人だと思われてるぞ」
茶化す尚輝に、絶対見たことあると断言する小川さん。
私は再度小川さんの顔を確認したけれど、記憶にはない人だった。
――そのうち思い出すだろ、いや意地でも思い出してやる。
尚輝にそう言って笑う小川さんは、見た目軽そうな感じで、スーツは程よく着くずしている。
プレイボーイ系っぽい感じがするから、私はなんとなく視線は合わせないようにしてやり過ごしていた。


