メニューを広げ、尚輝は呼び出しボタンを押しながら、美紗は何飲む?と。
尚輝も多分ビールだろうし、私もビールかなと言った所で、店員さんがやって来た。
尚輝がビールと軽くつまめる物を注文。
だけど、さっき小川さんが、先に始めるかと言ったことを思い出し、これから誰か来るのかなと、密かに私は期待してしまった。
その誰かが、敦君だったら、今日はかなりハッピーデーになるんだけど――。
尚輝が広げているメニューを横目で盗み見すると、ここは居酒屋ということが確認出来た。
駅前の通り沿いから路地に入った小ビル。
看板もなければ、派手なネオンもなかった。
隠れた名店系?
一体どういうルートでこのお店を知ったんだろう。
「あいつ遅いな――誰かにつかまってんのか」
スマホを取り出し、どこかに電話をかけ始めた小川さんは、お前、今どこ?と――電話の相手に聞いていた。
やっぱり誰か来るんだと、私は確信。
「今、駅着いたとさ」
「あ、マジっすか」
そんな会話をする尚輝と小川さん。
私は、誰か来るのか聞けないまま、ただじっと座っていた。
だけど、小川さんが再び私に強烈な視線を向け――。


