「こんばんは、初めまして」
「――初めまして」
一体誰なのか、疑問に思いながら頭を下げると。
尚輝が会社の上司の小川さんだと説明をしてくれた。
いつも尚輝がお世話になっております――なんて、差し障りないありきたりな挨拶をして。
尚輝に促されて席に座った。
敦君ではないんだということに少し残念な気分だったけれど、小川さんからの強烈な視線を感じて、私は気を取り直した。
「ね、本当に尚輝の妹?」
「――え?」
訝しげな目を向けられ、どう返せばいいものか。
だけど、私から視線を尚輝に向けた小川さんは――
「お前、中條じゃなくて、先に俺に紹介しとけよ」
軽い口調で尚輝にそう言って、再び私に視線を向けて来た。
「いやー小川さんは、女に不自由してないでしょ」
「はあ? してるっつうの」
2人がそんな会話で笑っていたけれど、なんで今この状況に私がいるのか、意味が解らない。
「小川さん、オーダーは?」
「来てから頼もうと思ってたから、まだなんも――先に始めるか?」
「とりあえず、何かオーダー入れておきます?」
「だな――俺はビールとなんかつまめるもん頼む」
「了解です」


