「そうなんだ」
「今月から、毎週木曜日は定時デーになったみたいだから、会社に戻っても誰もいないだろうからな」
「なったみたいだからって、随分他人事だね」
「営業には定時なんて関係ねーし、定時デーとか言ってても、来月になればそういう雰囲気じゃなくなってんだろ」
「そう、かなぁ」
「定時デーなんて、浮かれてんのは、ごく一部だよ」
「でもさぁ、決められた時間内に終わらせるって、必要なことじゃない?」
「確かに、それが理想だけど、現実的には難しいな」
「まあ、そうだよねぇ・・・・・・仕事の内容も量も、定時上がりとは、程遠そうだもんね」
普段の尚輝の帰宅時間を考えると、定時上がりなんて夢のような話。
雑事だって仕事のうちでもあるし、営業は私みたいに決められた事をやって終わりというだけの仕事でもない。
今日の今の時間でも、顧客だって仕事をしているのが大半だろうし。
しわ寄せは翌日に回って、循環の悪さは目に見えているようなものだ。
このご時世に、社員なんて易々増やせないだろうし。
無言になった尚輝は、小ビルの中に入り――飯喰うぞと言って階段を上った。


