彼は、理想の tall man~first season~


『そのこと――じゃねぇよ!! お前は本当に、懲りねーのな』

「いや、別に懲りるとか懲りないとか関係ないし」

『取り敢えず、今日は仕事速攻で終わらせろよ』

「えーって言いたい所だけど、残業とかないし」

『それじゃ――』


尚輝から、何故か待ち合わせ時間と場所を告げられ、電話はあっさり切られた。


え――っていうか、なんなの?

待ち合わせて一緒に帰るの?

携帯を閉じながら、どこまで心配性なんだろうと思いもしたけれど。

そうなる原因を作ったのは幼き頃の私――だ。

取り敢えず今日は、素直に尚輝に従っておかないと。

でも、従った所で、お説教は免れそうにないな。


軽く気鬱になりつつも、仕事が終わって待ち合わせ場所に向かうと、尚輝は既にそこにいた。

お疲れさま――そう言って、近づくと、行くぞと。

尚輝は駅の構外へと歩き出し、私はどこかに行くのかなと、疑問に思いつつも、尚輝について行った。


待ち合わせたのは、智子と通っているヨガ教室の最寄り駅。

複数の路線が通っている割と大きな駅だ。


「ねぇ、今日定時上がりだったの?」

「今日は、さっきまでお客さんの所で打合せで、直帰」