「いい加減、踏み出したら?」
「出さない!」
「出せないの間違いだろ、根性なし」
「・・・・・・」
「だいたいな、出さない! なんて、えばりくさって言うことじゃねぇんだよ」
今まで、尚輝がこんなにしつこく私の恋愛に口を出すことなんてなかったのに。
その尚輝が、なんで今日に限って、こんなにギャンギャン言ってくるんだろうって、私の中には疑問が芽生えた。
本当におかしいって思う。
「今、その話を持ち出さなくたっていいじゃん」
尚輝の上司の前で痴話喧嘩なんて、余計に醜態をさらすようなものだ。
「普段なんか、もっと聞く耳持たないだろうが」
尚輝のバカ野郎!!
本当のこと、言ってくれるんじゃないわよ――ちきしょうめ。
「私だってね、出来るならしたいよ――でも、出来ないんだから仕方ないじゃん」
誰かと出会ったって、誰にもときめけなくて、ときめかなくて。
ああ、でも、それをいつでも背の所為にしているのは私か。
人の本質が見えないんじゃなくて、見ようとしていないだけだということに、ふと気付く。
だけど、もう傷つくのは嫌なんだ――。


