彼は、理想の tall man~first season~


帰宅途中で、このお店の最寄り駅沿線上の電車に乗る途中だったらしい松本さんは、30分後くらいにやって来た。


「おう!!」

「久し振りだな」

「お疲れさん」


口々に松本さんに声を掛ける男性陣と、笑ってそれに応える松本さん。


「こんばんは――お疲れさまです」

目が合って、私も遅れて挨拶をすると、ニコリと笑って返してくれた。

だけど次の瞬間、あっ――と、なにかを 思い出したような雰囲気の松本さんは、ちょっといい?と。

表でなにかを話したい雰囲気で私に向かってそう聞くので、軽く戸惑った。

戸惑う私は、松本さんと敦君の間で、なんでか視線を行き来させていた。


「どうした?」

敦君が私の代わりに松本さんにそう聞いてくれて。

松本さんは軽くグーを握ると、親指を上下に2~3回動かしていた。

それを見て、ああ――と、納得を見せた敦君。


「多分、納車のことだと思うから、行っておいで」

なんの心の準備をしていなかった私の耳元で敦君がそう囁き。

日本酒関係なく、頬が一瞬にして、勝手に熱くなった。


いや、でも、こんなの普段ではまずない距離だし、なって当然だよね。