彼は、理想の tall man~first season~


そして、俺の期待通り、長山は自らその結果を語り始めた。


「中條の彼女は、今の所――そういうのは無かったし、感じなかったな」

「そう――か」


平静を装って、そう口にしてはいたが、安堵感は、易々と得られるものではなかった。

もしかしたら、と――そんな妙な不安がないワケではない。

まして彼女なら、男を手玉に取ろうと思えば、簡単に取れそうな要素は持ち合わせている。

長山が、今の所――と言ったのも、これから先はどうなるんだかって話だ。


「これって、結構重要なことだぞ? 変に男に媚びを見せないってのは、彼女が今の男に従順な証拠。夏美を悪く言いたくはないけど、あいつは、それが露骨だったからな」

「――夏美、か」

「藤本の人生の狂いは、あの時既に、ってことなのかもな」


松本と付き合う前、藤本と付き合っていた夏美。

大学での部活が、恋愛云々で面倒な時もあったなと、思い出した。


「中條に振られて、慰めたのが藤本で。暫く大人しく付き合ってたけど。でも、中條の方が松本と仲良かったろ?」

「まぁな」

「だから夏美は藤本じゃなく松本に乗り換えたと、俺はそう見てた」