彼は、理想の tall man~first season~


「分かり易いのは、目よりも口元だ」

「――はっ?」

「そういう女は、自然なんだか計算なんだか――可愛く見せようとでもしてるのか――口角をキュインと上げる」


なんで長山がこんな話をし始めたのか。

本当に気が知れない、が。

口角をキュイン――て、なんとなく想像は出来るが、もっとマシな表現方法はなかったのか。

そう思っている間にも、長山はお構いなしに口を開いていた。


「大学と会社とその他諸々、俺が小悪魔だと思った女は、そんなんばっかだった」

「―――」

「色目使うってよく言うけど、それプラス口元。ちょっとしたアイドルでも、なんか雰囲気変わったなって子は、口元の雰囲気が変わる」

「へぇ」

「中條と彼女には悪いと思ったけど、ちょっとどんなタイプなんだか気になったから、彼女のこと観察させてもらってた」

「本気かよ」

「悪いな――なんかもう習慣になっちゃってんだよ」


色んな人間がいるから、それを咎める気はないが。


どうだった?

――と、自らその結果を訊く気にはならなかった。

それに訊かずとも、長山ならこの先を、自らの視点で語ると思っていたから。