「分かり易いのは、目よりも口元だ」
「――はっ?」
「そういう女は、自然なんだか計算なんだか――可愛く見せようとでもしてるのか――口角をキュインと上げる」
なんで長山がこんな話をし始めたのか。
本当に気が知れない、が。
口角をキュイン――て、なんとなく想像は出来るが、もっとマシな表現方法はなかったのか。
そう思っている間にも、長山はお構いなしに口を開いていた。
「大学と会社とその他諸々、俺が小悪魔だと思った女は、そんなんばっかだった」
「―――」
「色目使うってよく言うけど、それプラス口元。ちょっとしたアイドルでも、なんか雰囲気変わったなって子は、口元の雰囲気が変わる」
「へぇ」
「中條と彼女には悪いと思ったけど、ちょっとどんなタイプなんだか気になったから、彼女のこと観察させてもらってた」
「本気かよ」
「悪いな――なんかもう習慣になっちゃってんだよ」
色んな人間がいるから、それを咎める気はないが。
どうだった?
――と、自らその結果を訊く気にはならなかった。
それに訊かずとも、長山ならこの先を、自らの視点で語ると思っていたから。


