「――結婚って、」
「ん?」
「彼女とは、まだ付き合い始めたばっかりだぞ」
「いや、彼女とっていうか、お前自身としては、結婚願望とかないのか?」
「落ち着いた方がいいんだろうけどな――あんまそういう環境に身を置いてなかったから、いまいちピントが合ってこない」
「そういうもんか」
「そのうち思うんだろうけど。俺も藤本と似たようなもんで、結婚願望は、どっかに置いて来ちゃったからな」
彼女の笑う姿を見て、いずれはそうなれたら――とか、考えない訳ではないが。
そんな淡い期待を抱いていた自分に気付き、時を経て、人の気持ちはそれとなく変わるもんなんだと、そう思った。
それでも、付き合い始めたばかりで、まだお互いを理解しているとは到底言えない関係。
彼女との結婚をほんの少しだろうと、考えるのはどう考えても時期尚早でしかない。
「俺の目から見てだけど」
「――ん?」
「女って、彼氏がいようが、彼氏の友達だろうが、自分を雌だと自然とアピールしてたりするんだよ」
「なんだよ、いきなり」
彼女もそうだと言いたいのか、長山の深意を探った。


