「でも、なんか会社のオフィスだけに留まらせてんの勿体なくねぇ? せめて受付嬢とかよ」
そんな会話をしながら、3人して完全に彼女へと目を向けていた。
いつでも弾ける状態になっていたピアノを前に、楽譜かなにかを見入っている。
その彼女の横顔は、やはり顔のパーツが整っていて、綺麗だと思わずにはいられない。
その時、不意にこちらに目を向けてきた彼女――。
その表情は、初めて見た時と同じ凛とした表情だった。
藤本が誤魔化し半分に手を振ると、彼女は少し困ったような表情に変わったが――どうやら練習をしたかったようで。
「練習したいので、音、出してもいいですか?」
こちらに気を遣って弾かずにいたのか――気を配ってくれていたことを知り、そんなところも改めていいと率直に思った。
藤本が頷きながら手で大きく、OKの合図を送ると、軽く頷くようにして目は逸らされた。
「案外、控えめな性格か?」
「――ん?」
長山からそう問われ、まあ割とそうかもと思う反面――そこまでまだ深くを知らないから、返答に困ったが。
場の空気を読むのはうまい方だと思い、意味合いは違ってくるが――それには軽く頷き返しておいた。


