彼は、理想の tall man~first season~


「中條がまだ手を出してないとか、まさかなぁ」


俺をどれだけ盛りのついたサルと思ってんだか――藤本の発言には、やっぱりなんだか頭痛もんだ。


「なに、なんか訳ありな感じなワケ?」

「ん? まあ、ワケありっちゃワケありになんのか」

「なんだよ、なんだよ?」


警戒していたとまではいかないが、軽くスルー出来たであろう話に、自然と口を開いてしまった我をほんの少し呪った。


「彼女、俺の後輩の妹っていうか、な」

「後輩って、大学のか?」

「いや、会社のな」

「はぁ? なんだ、それ? その後輩に紹介してもらったってことか?」

「んーまあ、なんつうか、ちょっと昔に知った顔で。偶然兄妹って知って、」

「なに、それで紹介してもらったのか?」

「その後輩にプライベートで用があって、その時に――ちょっとな」


当たり障りない程度に口を開きつつも、根掘り葉掘り聞き出そうという構えの藤本。


「お前って、相変わらず策士だなぁ」


策士なんて言われたら聞こえは悪いが、謀らなかったのかと問われれば――多少のそれは否めない。

だから、あえてその言葉には、無反応を決め込んだ。