彼は、理想の tall man~first season~


やっぱり頼み込んでアレンジだけはマスターにお願いしよう。


どう考えても、仕上げるまでに時間的余裕が欲しい。

完璧な状態で弾きたいと思うのは当たり前だ。

それが今日初めて会った人で、全く関係のなかった人の、喩え披露宴まがいのパーティーだったとしても――敦君を介してだとしても――。

多分、なんらかのご縁があって知り合って、こういう状況になっているんだろうから。


取り敢えず練習してみようかと思い、見ていた譜面をセット。

話し込んでいたらピアノの音は邪魔になると思って、3人がいる方へ視線を動かすと――。


――――えっ?

何故か、3人がこちらを見ていた。


なにか、言われてた?

そんな雰囲気を感じなくもなかった、けど。

藤本さんがこちらを見ていたのを誤魔化す雰囲気で、私に向かって手を軽く振って来て、私はそれを微妙に思いつつも――。


「練習したいので、音、出してもいいですか?」


今のこのタイミングでそう聞いて――頷き返され、そちらからは目を逸らした。