ちょっと待って、今のは――。
落ち着け、私。
冷静になろうとした所で、昨日ここで男連中は飲んでいたことを思い出した。
もしかして、和君かマスター?
人が寝ていて、私の足はその人の体に触れて――という推察で多分間違いない。
帰るよりも眠気が勝れば、ここで寝る選択が、2人にはある。
過去、私にだってあった。
心を落ち着かせながら、そっとドアを開けようとした瞬間――フワッとドアが開いた。
「ねみぃ~」
「マ、マスター!! なに、ここで寝てたの?」
欠伸をしながら面倒そうにマスターは頷いた。
尚輝も帰宅直後バタンきゅうだったけど、一体どれだけ飲んだのか。
「まだ、いんだろ?」
「あ、うん。これから練習させてもらおうかと」
「ん。ちょっとシャワーして来る」
「あ、はい」
気怠さをモロに背負っている感じで裏口に向かうマスターは、じゃあな――と、背を向けたまま手を振った。
マスターが住んでいる所は、此処から歩いてほんの数分。
それでも、大丈夫かなと心配してしまう。
「気を付けてよ?」
そう声を掛けると、ふっと笑った声が聞こえて、その直後裏口からマスターの姿は見えなくなった。


