彼は、理想の tall man~first season~


敦君の腕や手を見上げて、逞しさを感じながら電車に揺られていた時――。


「――っ!!」

いきなり車輌が大きく揺れ、立っていた一同がその揺れに連鎖して、踏ん張りきれずに揺さぶられていた。


私は手をドア側について、どうにか踏み止まれたけど、「ごめんね」甘く聞こえたその声は、やっぱり私の耳元。

他の人が揺れによって体のバランスを崩し、敦君はその勢いに巻き込まれた感じで。

だけど、多分・・・・・・周囲からの雪崩の勢いを自分で止めようとはしてくれて。

結果的に、壁を突いていた右手はそのままだったけど、私の腰からお腹周りには、敦君の左手が巻かれ――。

後から抱き抱えられているような体勢になっていて。

私の心臓は超高速で絶賛稼働中状態。

こういうハプニングみたいな事に慣れない私は、「着くまでちょっと我慢してね」と――敦君のその言葉に静かに頷いた。


私が立っている逆側のドアからは、更に人が乗り込んで来て、全体的にこちらの方に押された感じの車輌の中。

敦君との密着度はハンパない。

だけど、いやらしさ――みたいなモノを全く感じさせないから不思議だった。