「良かった。さっき、え? って、言われた瞬間、嫌なのかと思った」
「まさか、そんな。思う訳ないです」
昨夜、特に深くも考えていそうにないって思っていた敦君からの話は――。
私が抱いていた悩みを、意図も簡単に取り払ってくれるような話。
気にしていない雰囲気だと思っていたけれど、意外にもちゃんと考えてくれていて。
取り越し苦労だったのかな――なんて。
お互いに何が必要かを、考えてくれていた感じが、思っている以上に誠実な人なのかと、私にそう思わせてくれた。
結果、気持ちがスッと楽になって、自然と頬が緩んでいた。
孤軍奮闘みたいな感じじゃなくて、もっと寄りかかる――みたいな感じでも、受け入れてもらえるんじゃないか。
これからに――そんな期待と希望が芽生えて、そう思えた事によって、本当に気分が大分楽になれた。
ゆっくりでも、ほんの少し前に向かって進み始めたって思っていいのかな。
なんとなく目が合って、お互いに微笑み合った。
その直後、敦君は軽く乱れていた私の髪を、指先で整え――。
そんな些細なことで、私の胸はキュンとなった。


