思わずギュッとシャツを掴んでいた私は多分図々しいんだろうけど、縋れる人がいるというのは、心強い。
布越しから伝わってくる敦君の温かな体温は、体の強張りを緩めてくれるような感覚。
髪を梳くように、一定の速度で動く手は、まるで魔法で。
恐怖心が、少しずつ解かされていく――。
「ねぇ、こういう時は、いつもどうしてたの?」
暗闇に響く敦君の声。
こういう時は――嫌がる尚輝の布団に潜り込んで、背中をくっつけて一緒に寝ていた。
だけど、それを正直に言えるほど、私は子どもでもない訳で。
「ウォークマンの音量をかなり上げて、それを聴いて。布団にくるまって、雷音や稲光を見ず聞かずに徹していました」
尚輝がいない時、実行していた雷の恐怖からの回避方法を言った。
「でも、こういう日は、夢見が悪いから――寝るのがちょっと怖いです」
「夢見が悪いって、怖い夢を見るの?」
「――はい」
尚輝が居れば、尚輝の布団に潜り込んで、多少強引にでも一緒に寝てもらうんだけど。
今日はいないから、そういう訳にいかない。
だから、本当は――今日は一緒に寝て欲しいくらいなんだ。


