人間の力なんて自然に勝るものではないし、自然の前には人間はいつだって無力だ。
空気の摩擦で電荷を蓄えている飛行機は、恰好の避雷針状態であり、雷があたっても金属で出来ている機体表面を伝って、尻尾から抜けて空中放電される。
だから、客室内部には何事も感じないようになっている、らしいけど。
でも、そうだからといって、闇雲に当たりまくっても平気な訳じゃない。
雷が機体に当った瞬間、パイロットは眩しい光にやられて、目が眩むし、その間に飛行機は何百キロという速さで進んでいる訳だから、何が起こるか――。
それに、電子機器の障害が発生する可能性だってある。
「これはCGで、作りモノの映像なんだからって思っても、実際、悪路に限っては、頻繁に出くわしてしまうと思うし」
敦君は、黙って私の話を聞いてくれた。
ただ、これは――私が考えた所で――レベルの話だで、単に父親の心配にしか過ぎない話。
でも、敦君は――
「美紗ちゃんは、お父さんのこと、大好きなんだね」
――優しい表情でそう言いながら、私の頭にポンと手を置き、髪をくしゃりと撫でた。


