父親の職業柄、飛行機モノの映画は、観てもコメディー系しか観まいと決めていたけれど。
あれはいつだったか――なにかの拍子で観る羽目になってしまったんだ。
別にただの映画――。
だけど、常に危険と隣り合わせの職業で、人の命を一手に何百人と預かる父の生業。
ただの映画でも、激しい雷雨の空路で、機体も乗客もこの上なく危険に曝され、画面では幾つもの稲妻が行く手を阻んで。
そんな映画を観てしまったら、元々嫌いだった雷が、本当に嫌いになったのだ。
人には、雷くらい本当にどうでもいいことかも知れない。
でも、空路の悪路を考えると、父の精神的負担は私には未知の世界で。
お父さんのフライト中に、雷雲が――。
そういうことを考えて止まない時期があった。
もしも父が操縦している機体が悪路に入ってしまったら――。
もしも父が操縦している機体が何者かにハイジャックされてしまったら――。
バカみたいだけど、考えてしまったんだ。
勿論、安全を保障された機体が空を飛ぶ。
でも、天候や機体の状態によって、100%の安全なんて皆無に等しい。


