フラフラしながら言う智子に、危なっかしいなんて言われていることに、心外だなーとか思ったけど。
彼女なりに私を心配してくれているんだと思うと、しっかりしないとだって、改めて思わされる。
「気付くと変なのに声掛けられて連れて行かれそうになってたり、名刺渡されてたり、ざらだったもんな」
「うんうん。本当にそうなんですよ。でも、まあ、もう大人ですし、いい歳なんで、そういうのもなくなりつつあると思いますけど。目は離さないようにして下さいね」
マサ君も智子も、いったい何時の時代の話をしているんだかって、ちょっと過保護な2人に気を取られていると。
背後からこちらに向かって走ってくるような――そんな勢いのある足音が聞こえ。
敦君が2人に何か言っていたけれど、その足音が気になってしまって、振り返った。
そして、先生―――と。
「あれ、奏君、どうしたの?」
敦君から手を離して、完全に振り返った私の目の前で奏君は息を切らせながら立ち止まった。
ここはバーから、そこそこの距離。
奏君はその道程を、走って来たんだろうか?


