「おい、なおきー」
『――ん、なに? マスター』
「お前ぇの妹、ちょっと会わない間に、酔うと面倒臭くなったな。エラい絡むけど、なんだこれ?」
『単にマスターに絡みたいんじゃないの?』
「おぉ、勘弁しろよー」
マスターが尚輝に絡んだ事で、同じテーブルでも、なんとなく二手に分かれた感じで飲んでいたけれど、それが輪となり。
「敦さん」
「ん?」
「ちゃんと飲めてる? ほっとくと美紗が全部飲んじゃうよ」
「美紗は、本当にお酒には目がない子なんですよ~。ねっ? 将也」
「そうそう、本当に。昔、トモの家で飲んだ時――」
夜もいい感じに更け始め。
今朝も――というか、今週も朝は早かったから眠い。
周りで話が盛り上がって、笑ったりなんだりで、騒がしいけれど。
私の眠気は――それに勝りそうだ。
頭がボーっとして、ステージに佇んでいるグランドピアノをぼんやりと眺めて、ウィスキーを飲み。
煙草に火をつけ、なんとなくそれを吸った。
家に帰るのが怠いから、どこでもドアが欲しい。
飲むと、たまぁに非現実的な思考下に陥ることがある。


