彼は、理想の tall man~first season~


「美紗は暴力的だけど、大丈夫か?」

突然、話しの先が敦君に向き、彼もそれに驚いたのか、ハハッと笑う。


「もう、余計なこと言わなくていいし」

私がマスターに軽くキレて見せると、マスターは相変わらず悪そうに笑って。

「お前、ピアノ弾いてる時は、いい女なんだけどなぁ?」

更に余計なことを言って、私をイライラさせた。


「なぁにキレてんだよ、本当のことだろ?」

「・・・・・・」

まともに相手にする方が無理だと思って、私はマスターの言葉を無視した。


けれど――。

「美紗は、ピアノに向かってる時は難しい曲でも、どうにかしようって向上心が生まれんだけどな――ただひとつ、恋愛にそうなれねぇ所が、な?」


語尾の“な?”に――分かってんだろ?

そう言われている気がした。


黙って聞いていたけれど、やっぱりこのおじさんは、私のことを解ってくれているのだと、思い知らされる。


「あんちゃんよぉ、」

「――はい?」

再び話の先が敦君に向き、2人はしっかり目を合わせていた。

マスターがなにを言おうとしているのか?

私は黙ったまま、変に緊張していた。