「美紗は、飲めねぇ男に、用はねぇもんなぁ?」
いきなり何を言い出すかと思えば――このおじさん、本当に余計なことしか言わない。
軽く睨んで見ていた私に、フッと口端を上げ、何を考えているのか解らないおじさんは、ロックで作ったウィスキーを敦君の目の前に置いた。
ありがとうございます――なんて律儀にもお礼を口にした敦君も、私には何を考えているのかは解らない。
私にもそれを作ってくれて、自分の分も作ったマスター。
妙とも思えた3人で、ひとまず乾杯。
「はぁ~あ、仕事の後の一杯はうめぇなぁ」
「まだ仕事終わってないんでしょう? 和君だって仕事してるのに」
「まあなー」
「まあなーって、本当にいい加減なんだから」
「あ? 今日はいいだろ」
「なにがいいの? 社長なんだから、最後までしっかり働きなさいよ」
膝をパチンと叩いた私に、「暴力的だな」と、ギロリと睨むマスター。
やる気があるのかないのか。
微妙なマスターのこのお店が成り立っているのは、間違いなく和君のお陰だと、私は昔から思っていたけど。
どうやらそれは、今も同じ状況のようだ。


