「出張していたなら、お疲れなんじゃ――」
そう口にした私は、敦君からジッと見つめ返されて、その熱いとも取れた眼差しに、ドキッとした。
ここはBARで、そこそこの雰囲気はある。
久々に見たスーツ姿は、大人の色気を存分に醸し出して、どう反応したらいいか解らない。
心臓だけが、ドキドキと音を上げる。
――なんだろう。
いつも以上にドキドキしているのは、その雰囲気にやられているのか、アルコールにやられたせいか。
「多少は疲れたかな――でも、今日は、美紗ちゃんのピアノで癒やされたかな」
「――っ、」
誉められたって、思ってしまっていいのかな?
敦君からの意外だった言葉に、必要以上に心拍数が上がって、私はそれを落ち着かせようと、カクテルをひと口飲んだ。
ただ――アルコール度数の高いカクテルが、別の意味で私の体を熱くさせるんだけど。
それから、その出張の話を聞きながら、暫くゆっくり飲んでいた。
そして、敦君のグラスの中身が底をつきそうになった時――。
「飲んでっかー?」
低音ボイスが背後から聞こえ、ドンッとテーブルに、私の好きな山崎18年の瓶が置かれた。


