「最初が肝心なんだよ。こんなことでケッ躓いてっと、先なんか望めねぇぞ」
「・・・・・・はい」
マスターらしい背中の押し方だなと、他人事のように思った。
でも、確かに、今ここで留まっていても、なんにもならない。
「とっとと行けよ」
「――はい。本日は大変ご迷惑をお掛け致しました。ありがとうございました」
「おう!」
「あ! 和君、同じものお代わり」
「おんめぇは、本当に酒好きだなぁ」
呆れながら笑うマスターに感謝しながら席を立った。
「作ったら向こうに持ってく」
「ありがとう」
和君にもお礼を言って、歩き出そうとした――けれど。
今日は、結構強いカクテルをグイグイ飲んでいたからか、一瞬クラッとした。
「おい、大丈夫か?」
「まだ序の口」
変な緊張が解けた――というのもきっとある。
「気ぃつけろよ」
「はーい」
気合を入れて深呼吸。
私は皆のいる席に向かった。
テーブルに着くと、尚輝の無言でも解る「なにしてんだよ」みたいな、嫌な視線。
私は尚輝を無視して、敦君に「こんばんは」と――よそよそしくも挨拶をした。


