彼は、理想の tall man~first season~


「最初が肝心なんだよ。こんなことでケッ躓いてっと、先なんか望めねぇぞ」

「・・・・・・はい」


マスターらしい背中の押し方だなと、他人事のように思った。

でも、確かに、今ここで留まっていても、なんにもならない。


「とっとと行けよ」

「――はい。本日は大変ご迷惑をお掛け致しました。ありがとうございました」

「おう!」

「あ! 和君、同じものお代わり」

「おんめぇは、本当に酒好きだなぁ」

呆れながら笑うマスターに感謝しながら席を立った。


「作ったら向こうに持ってく」

「ありがとう」


和君にもお礼を言って、歩き出そうとした――けれど。

今日は、結構強いカクテルをグイグイ飲んでいたからか、一瞬クラッとした。


「おい、大丈夫か?」

「まだ序の口」


変な緊張が解けた――というのもきっとある。


「気ぃつけろよ」

「はーい」


気合を入れて深呼吸。

私は皆のいる席に向かった。


テーブルに着くと、尚輝の無言でも解る「なにしてんだよ」みたいな、嫌な視線。

私は尚輝を無視して、敦君に「こんばんは」と――よそよそしくも挨拶をした。