「尚君のスーツ姿も萌だけど。中條さんのスーツ姿も、オトナ男子って感じで、萌ぇ~だね」

ふふっと笑いながら、立ったままだった智子はよろけそうで。

危なっかしいと体を支えると、智子は私の腕を結構な力で掴んだ。


智子、結構飲んだな。

今日はマサ君も一緒だから、安心して飲んでるんだと、勝手に解釈。


それにしても――とんだ勘違いで、穴があったら入りたい気分だ。


「美紗、あっち行こうよ」

「あの、ごめん。ちょっとマスターと反省会してから行く」

「うん? 解った、待ってる」

「転ばないでよ?」

「うん、気を付ける~」


智子には、先に席に戻ってもらった。

今、平然とあのテーブルにつけるほど――敦君と顔を合わせられるほど――私はそこまで肝が太い訳ではない。


「お前ぇは、本当に恋愛絡むと疑う事しか出来ねぇのな」


マスターは、智子が去った後、白い目を私に向けた。


「私って完全にバカだよね」

「間違いねぇな」

「なんか下手に疑っちゃったから、一体どんな顔して会ったらいいのやら――本当バカだわ」

「あ? 別に、そのまんまでいいじゃねぇかよ」