彼は、理想の tall man~first season~


「どういう関係にも見えねぇ」

「――はい?」

「そもそもあんま興味ねぇし」


どうでもよさそうに答えたマスターに、私ももうどうでもいいと、思い始めた。

こういうのに振り回されるなんて――そもそも、らしくない。

逆に、感情に振り回されている私が異常であって。

からかわれていただけなら、からかわれいただけだったって、笑い飛ばして――単に出会う前の私に戻るだけだ。


「男が女の体のどっかに、手ぇ廻してた訳じゃねぇし。女が故意にべったり寄り付いてるように俺には見えた」

「――それが、なんなの?」


私は、恋愛には、もっとドライに生きていたんだ。

「俺が見た状況だ」

「そう」

だから、ドライになればいい。

それだけのこと――だ。


「なぁ、美紗」

「――なに?」


でも、マスターが珍しく真面目な顔をしていたから、ちょっと構えてしまった。


「ちょっと試してみるか」

「試してみるって、なにを?」

「お前の彼氏をよ」

「それって――何かするってこと?」

「そう。お前、ちょっと俺と連弾しろ」


マスターのまさかの提案に、私は一瞬言葉を失った。