「どういう関係にも見えねぇ」
「――はい?」
「そもそもあんま興味ねぇし」
どうでもよさそうに答えたマスターに、私ももうどうでもいいと、思い始めた。
こういうのに振り回されるなんて――そもそも、らしくない。
逆に、感情に振り回されている私が異常であって。
からかわれていただけなら、からかわれいただけだったって、笑い飛ばして――単に出会う前の私に戻るだけだ。
「男が女の体のどっかに、手ぇ廻してた訳じゃねぇし。女が故意にべったり寄り付いてるように俺には見えた」
「――それが、なんなの?」
私は、恋愛には、もっとドライに生きていたんだ。
「俺が見た状況だ」
「そう」
だから、ドライになればいい。
それだけのこと――だ。
「なぁ、美紗」
「――なに?」
でも、マスターが珍しく真面目な顔をしていたから、ちょっと構えてしまった。
「ちょっと試してみるか」
「試してみるって、なにを?」
「お前の彼氏をよ」
「それって――何かするってこと?」
「そう。お前、ちょっと俺と連弾しろ」
マスターのまさかの提案に、私は一瞬言葉を失った。


