彼は、理想の tall man~first season~


その後は話題を変えて、奏君の演奏をバックに、3人で昔話に花を咲かせて、楽しいひと時を過ごした。


マサ君と智子は社会人になって付き合い始めたカップル。

友達の期間が長かったこともあり、2人が付き合い始めた頃は少しの違和感を感じたけれど。

今ではすっかりお似合いのカップル。

あまり長居するのも悪いと思って、私は2人の追加オーダーを和君に伝える為に席を離れ、そのまま水回り仕事を手伝った。


――22時か。

何時にこの店を出れば終電に間に合うか。

引っ越した今、それがイマイチ分からない。

手元に携帯はなく、逆算しようにも出来ず。

早めに調べておこうと思い、グラスを洗い流して水場を離れ、私はひとりスタッフルームに向かった。

そして、何の変化もなかった携帯を握り、電車の乗り継ぎ検索をして時刻を調べた。


この店のラストまでは、とてもじゃないけどいられない。

今日はマスターのマンションに泊めさせてもらおうか――最悪ここで寝て行くのもありか?


そんなことを考えながらスタッフルームを出ると――。

私には、全く想像もしていなかった出来事が待ち受けていた。