やっぱり奏君はここで働いてるんだ。
でも、奏君が夜お店で働いてるなんて、あのお母さんなら卒倒しそうな気がするけど。
なにか訳ありなのかな?
奏君が大学生だったとして――でも、アルバイトなんてしなくも、あのお家なら先ず食うに困ることはないと思うけど。
やっぱり、なにか訳ありなのかな?
「先生、まだ帰らないよね?」
和君から私に視線を戻して、そう聞いて来た奏君に、頷き返すと、良かった――と。
ほんの少し笑った奏君の顔は、当時と違ってすっかり男の顔。
不覚にも、私はドキッとしてしまった。
「なに、奏の事知ってんの?」
「え? うん、ちょっとね」
「なになに? なんか訳ありっぽいじゃん」
「いやいや、そういうんじゃなくて。昔バイトしてた時、嬰と他に掛け持ちしてたバイト、」
「ピアノの先生だろ?」
「うん、その生徒が、奏君だったの」
「はあっ? マジか?」
「うん、だからかなりビックリしてたんだけど」
「だろうな。って、待てよ」
「なに、どうしたの?」
――和君の様子が、なんだか変だった。


