空いている席に座ったのを見計らって、和君が動く。
今日は金曜日で、そこそこ混むのかなと思っていると、スタッフルームからフロアホールに通じている裏通路から、誰かがひょっこり顔を出した。
そして、薄暗に見えた顔は、なんとなく美青年に見え。
そのなんとなく美青年が、私を見て「え?」って顔してかたまった。
私はその彼を見て、誰かに似ていると感じて、頭の中で誰だろうかと検索し始めた。
「せん、せいでしょ?」
「・・・・・・え?」
「美紗先生でしょ?」
「あの、」
「やっぱり美紗先生だよね?」
なんとなく美青年は、私を知っているようで――ゆっくりと近付いて来る。
薄暗かった場所から、彼の顔がライトに当たり、はっきりと見え始めた。
「も、もしかして――奏君?」
「うわ、本当に美紗先生だ」
ビックリなんてもんじゃなかった。
学生時代にしていたピアノの先生という名のアルバイト。
その中でも、この奏(かなで)君は、ちょっと訳ありだった生徒だ。
偶然の再会――。
私は美青年を奏君だと認識してから、驚き過ぎて呼吸をするのも忘れてしまった。


