彼は、理想の tall man~first season~


空いている席に座ったのを見計らって、和君が動く。

今日は金曜日で、そこそこ混むのかなと思っていると、スタッフルームからフロアホールに通じている裏通路から、誰かがひょっこり顔を出した。

そして、薄暗に見えた顔は、なんとなく美青年に見え。

そのなんとなく美青年が、私を見て「え?」って顔してかたまった。

私はその彼を見て、誰かに似ていると感じて、頭の中で誰だろうかと検索し始めた。


「せん、せいでしょ?」

「・・・・・・え?」

「美紗先生でしょ?」

「あの、」

「やっぱり美紗先生だよね?」

なんとなく美青年は、私を知っているようで――ゆっくりと近付いて来る。

薄暗かった場所から、彼の顔がライトに当たり、はっきりと見え始めた。


「も、もしかして――奏君?」

「うわ、本当に美紗先生だ」


ビックリなんてもんじゃなかった。

学生時代にしていたピアノの先生という名のアルバイト。

その中でも、この奏(かなで)君は、ちょっと訳ありだった生徒だ。


偶然の再会――。

私は美青年を奏君だと認識してから、驚き過ぎて呼吸をするのも忘れてしまった。