彼は、理想の tall man~first season~


私は久々に、そのカーテンコールを弾き始めた。

開店したばっかりなのに、カーテンコールってどうかと思ったけれど。

お客さんはまだいない。


お客さんの誰からもリクエストされることがなくても、バイト時代、たまにマスターから命令が下り、弾いた曲。

懐かしいと思いながら弾き終えて、私はマスターのいるカウンターに移動した。


「久し振りだから下手っぴなのは勘弁してね」

「んー? そうでもねぇだろ」

マスターが珍しく私を認めてくれているような言葉に、ちょっと驚きつつ。

着替えた和君がカウンター内で準備を始めていたので、手伝おうかと声を掛けた。

だけど、「久し振りに来たんだから、ゆっくりしてなよ」と、返って来たのはそんな言葉で。

私はお言葉に甘えさせてもらって、「飲むでしょ?」と、和君が出してくれたウィスキーを、素直に頂いた。


「あ、そうだ! ウェディングソングの最近の流行りってあったりする?」

ここでバイトをしていた時は、流行歌や色々な時代の歌を良く聴いては弾いていたけれど。