私は久々に、そのカーテンコールを弾き始めた。
開店したばっかりなのに、カーテンコールってどうかと思ったけれど。
お客さんはまだいない。
お客さんの誰からもリクエストされることがなくても、バイト時代、たまにマスターから命令が下り、弾いた曲。
懐かしいと思いながら弾き終えて、私はマスターのいるカウンターに移動した。
「久し振りだから下手っぴなのは勘弁してね」
「んー? そうでもねぇだろ」
マスターが珍しく私を認めてくれているような言葉に、ちょっと驚きつつ。
着替えた和君がカウンター内で準備を始めていたので、手伝おうかと声を掛けた。
だけど、「久し振りに来たんだから、ゆっくりしてなよ」と、返って来たのはそんな言葉で。
私はお言葉に甘えさせてもらって、「飲むでしょ?」と、和君が出してくれたウィスキーを、素直に頂いた。
「あ、そうだ! ウェディングソングの最近の流行りってあったりする?」
ここでバイトをしていた時は、流行歌や色々な時代の歌を良く聴いては弾いていたけれど。


