彼は、理想の tall man~first season~


「ちょっと着替えて来るわ」

「はーい」

先にホールに向かうと、カズ来たのか?と、マスターが聞いてきた。


「うん、着替えるって」

「んーじゃ、表のライトも、そろそろ点けるか」


まだ点けていなかった事に、ちょっと呆れつつ。

私は再びピアノを弾かせてもらおうと思って、ピアノに向かった。


このお店は、クラシックと洋楽と邦楽、インスト系とジャンルは比較的なじみのある楽曲ばかりを弾き流している。

その中でも、邦楽のバラードのリクエストをもらうことは多々あったなと、私がバイトをしていた当時、人気の高かったアーティストの譜面を広げて弾き始めた。


一曲目、二曲目と順番に弾き、三曲目に譜面に登場した曲は、高校生の頃大好きだった曲。

懐かしさも手伝って、弾き込んでいると、「おい」と――。

マスターがピアノの脇に立ち、声を掛けて来た。


「久々にカーテンコール」

「はいっ!?」

「だから、カーテンコール弾けっつってんだろ」

「え? ああ、カーテンコールね。マスター何気にこの曲好きだよね」


いいからとっとと弾け――と、偉そうに言ってカウンターに引っ込んだマスター。