「あんだ? 酒飲まねぇのか?」
「ちょっと先週から飲み過ぎてるから、さ」
「つまんねぇ女だな」
「はぁ?」
「はぁ? じゃねぇよ」
「うるさいなー。弾き終わったら飲むかも知れないけど」
「お前のことだから、かも知れないじゃなくて、飲むな」
「お店のお酒全種類飲んでやる」
「言ってろ」
ゲラゲラ笑いながら烏龍茶をグラスに注ぐマスター。
その烏龍茶をもらって、ピラフとサラダを平らげた私は、一旦スタッフルームに引っ込んだ。
歯を磨いて、口紅を直して、再びホールに戻ろうとした時、携帯が震え始め。
もしかしたら――そんな期待が胸をジリジリとさせる。
けれど、画面には尚輝の文字。
淡い期待は泡と化し、「もしもしー」なんて、ふてくされて電話に出ると。
『美紗、お前、今日なにしてんの?』
聞かれたその問いに、そう言えば――今日の予定は言わずに出勤していたということに気が付いた。
「今日はマスターの所にいる」
そう言うと、『ふぅ~ん』と、素っ気ない返事。
帰りが遅くなる事を伝え、通話を終えた。


