彼は、理想の tall man~first season~


「あんだ? 酒飲まねぇのか?」

「ちょっと先週から飲み過ぎてるから、さ」

「つまんねぇ女だな」

「はぁ?」

「はぁ? じゃねぇよ」

「うるさいなー。弾き終わったら飲むかも知れないけど」

「お前のことだから、かも知れないじゃなくて、飲むな」

「お店のお酒全種類飲んでやる」

「言ってろ」


ゲラゲラ笑いながら烏龍茶をグラスに注ぐマスター。

その烏龍茶をもらって、ピラフとサラダを平らげた私は、一旦スタッフルームに引っ込んだ。


歯を磨いて、口紅を直して、再びホールに戻ろうとした時、携帯が震え始め。

もしかしたら――そんな期待が胸をジリジリとさせる。


けれど、画面には尚輝の文字。

淡い期待は泡と化し、「もしもしー」なんて、ふてくされて電話に出ると。

『美紗、お前、今日なにしてんの?』

聞かれたその問いに、そう言えば――今日の予定は言わずに出勤していたということに気が付いた。


「今日はマスターの所にいる」

そう言うと、『ふぅ~ん』と、素っ気ない返事。

帰りが遅くなる事を伝え、通話を終えた。