彼は、理想の tall man~first season~


私は何から弾こうか迷いながらも椅子に座り――適当に指慣らし程度にピアノを弾いた。

そして、少し経った所で、マスターがこちらにやって来た。


「たまにゃ弾かねぇと、衰え感じるだろ」

今、まさに思っていたことをズバリ言われて、素直に頷くと、マスターはホールステージの端にある棚から、適当に譜面を取って渡して来た。


受け取った譜面はノクターン。

先ずはこれを弾いてみろと言われた雰囲気で、私はその譜面を広げて弾き始めた。


大好きなショパン。

昔何度も弾いたノクターンは、私にピアノを弾く感覚を思い出させてくれるには充分で――。

ピアノを弾くことが楽しいと、私に思わせてくれるにも充分だった。


「メシ、出来たぞ」

繰り返し弾き、曲が終わった所でマスターは声を掛けて来た。

カウンターに移動すると、サラダとピラフが並べてあり。

「いただきまーす」

私はそれを食べ始めた。


このお店の開店時間は、悪そうなオーラを発してるマスターの気分次第みたいな所があって。

来るお客さんは、大体どこかで飲んで、2~3軒目でここに来るという常連客が殆ど。