「――いったぁ」

「大丈夫?」


うんうん頷きながらおでこをさする。

けれど、ジンジンと痛む。

それは――その背中が思っていた以上にガッチリしている躰だと物語っていた。


「ちょっと見せて」


――え?

なんて思った時には遅かった。

敦君の私の耳下にかかった手によって、軽く顔を上げざるを得ない状態だった私は、真っ赤になる時間もないくらい、敦君に瞬殺でおでこを見られていて。

目線だけをちょっと上に動かすと、敦君と目だけバチッと合ってしまった。


こういう体勢で、こういう状況って。

想像してしまったそれを――私は瞬時に考えないようにした。


だけど――なんとなくそういう雰囲気って、お互いに感じてしまうものであって。

否応無しにドキドキしていた。


目を閉じるべきか――閉じるべきじゃないのか――。


考えていた間に、チンと。

背後でエレベーターが開いた。

そのチープな音にハッとして、「もう、大丈夫です」なんて言いながら、慌てて離れた私は、間抜けにもよろけそうになっていて。

「危ないからちょっとつかまってて」

敦君は自分の腰ベルトを、私に握らせた。