「そんな事、出来る訳ないし」
「部長にでも話して、どうにかしてもらえよ」
「どうにかしてもらえるなら、とっくにどうにかしてもらってた」
男と女の会社での立場というものは、男女平等――男女雇用機会均等法が唱われていたとしても所詮は法律の話であって。
全てに於いてそれが浸透しているのかって考えたらそうじゃない。
会社にはその会社特有の雰囲気みたいなのだってあるのに。
そういうことを踏まえて、理解してくれる人なんて、身近にいないし。
それに――私がそれをどうにかしたいと思っていないんだ。
実際どうにかしたいとは思うけれど、普段の課長はセクハラとは無縁の人。
だから、お酒が全て悪いんだって、私は言い聞かせていて、納得もしているんだ。
だったらそれでいいじゃん、と思う。
「美紗」
「なぁに? もう、今話した所でどうにかなることでもないんだから、その話はもう終わりにして」
まだ何かを言いたさそうだった尚輝に、私は可愛げがないであろう言葉を放ち、席を立った。


