彼は、理想の tall man~first season~


どういう風の吹き回しなのか?

好きなサッカーを見ていればいいのにと思う尚輝は、サラダボウルを取り出して、野菜を盛り始めた。


「なぁ」

「なに?」


尚輝が小声で呼ぶもんだから、私も小声で返すと――。


「マジなの?」

「なにが?」

「それとも偽装か?」

「なに言ってるの? 意味が分からないんだけど」

なにがマジで、なにが偽装なんだか――尚輝のその質問の趣旨が、私には全く解らなかった。


「さっきの電話、親父から」

「――え?」

「美紗、お前、敦さんと付き合ってるって、マジなのか?」

「――マジですけど」


そこでやっと、私は尚輝の質問の趣旨を理解した。


「ならいいんだけど――見合いを断りたいが為の偽装とかじゃないんだな?」

「そんなことしないし。っていうか、それ思いついた所で、頼めるわけないでしょ」

「まぁ、そうだわな。美紗の性格じゃ」


お父さんが、なんで今日のタイミングで尚輝に電話を掛けて来たのか?

何か探ろうとでも思っていたのかな?

なんだか胸の中がモヤモヤしていた。