彼は、理想の tall man~first season~


「美紗」

「――はい?」

「今朝は、ごめん、悪かった」


このタイミングでそんな事を言われるのは予想外だった。

なんて返せばいいか分からなくて、晃に戻した視線はどうすることも出来ず――。

ただ、その私の無言を、まだ怒っていると勘違いした晃は、

「マジで、ごめん」

再び謝って来たんだ。


もう、思い出したくないから、なにも言わないで欲しい。

でも、そうもいかなくて、「もういいし」と――可愛げなくそれだけ言って、晃から視線を外した。


「あのさ、俺が渡したのは1万円。君が受け取ったのも1万円だったよね?」

「は、はい」

「で、4817円が会計金額なんでしょう?」

「・・・・・・はい」

「1万円から4817円を差し引くと――5183円になるよね?」

「えっと、ちょっと待って下さい・・・・・・」

暗算が余程苦手なのか?

かなり焦っている様子のバイト君。

敦君は背が高いだけあって、バイト君を見下ろしている感じになっていた。


「電卓はないの?」

「えっ、その、バイクに忘れてしまいまして」