いきなり晃が、無言で私の手からピザを取り上げた。
その顔を見上げると、「あ?」みたいな態度で。
私はその目から逃れる為に、敦君の背中へと視線を動かした。
「おい」
「・・・・・・」
「おい」
「・・・・・・」
晃がなにか言っているけれど、完全にシカトした。
「おい、呼んでんだろ」
「・・・・・・」
「美紗」
「なに? もしかして、おい、って私に対して言ってたの?」
「お前以外に誰がいるんだよ」
そう言われ、捻くれ者の私は、玄関にいる敦君とバイト君へ視線を動かした。
私以外に2人居ますけど――なにか?
みたいな感じを目で訴えてやった。
お釣りの計算が出来ないっぽいバイト君と、お釣りが合わないのか、お釣りの確認をしている敦君。
その時、焦ったバイト君が、持っていたポーチから、小銭をぶちまけてしまって。
「大丈夫?」
「すっ、すみません! 申し訳ありません」
バイト君は当然のことながら、敦君も腰を屈めて小銭を拾い。
私も拾った方が――と、思ったけれど、流石に玄関口で大人3人はキツイなと思って、行く末を見守るに留まった。


