彼は、理想の tall man~first season~


いきなり晃が、無言で私の手からピザを取り上げた。

その顔を見上げると、「あ?」みたいな態度で。

私はその目から逃れる為に、敦君の背中へと視線を動かした。


「おい」

「・・・・・・」

「おい」

「・・・・・・」

晃がなにか言っているけれど、完全にシカトした。

「おい、呼んでんだろ」

「・・・・・・」

「美紗」

「なに? もしかして、おい、って私に対して言ってたの?」

「お前以外に誰がいるんだよ」

そう言われ、捻くれ者の私は、玄関にいる敦君とバイト君へ視線を動かした。


私以外に2人居ますけど――なにか?

みたいな感じを目で訴えてやった。

お釣りの計算が出来ないっぽいバイト君と、お釣りが合わないのか、お釣りの確認をしている敦君。

その時、焦ったバイト君が、持っていたポーチから、小銭をぶちまけてしまって。

「大丈夫?」

「すっ、すみません! 申し訳ありません」

バイト君は当然のことながら、敦君も腰を屈めて小銭を拾い。

私も拾った方が――と、思ったけれど、流石に玄関口で大人3人はキツイなと思って、行く末を見守るに留まった。