彼は、理想の tall man~first season~


降りてからの私の立ち位置は、敦君とは結構な近距離。

だからこれでもかというくらい心臓は騒ぎ。

「疲れてない?」

そんな優しい言葉にも、心臓がわさわさ状態で。

私は無言でコクコクと頷いた。


「あ・・・・・・家で何か食べます、る?」

言っててちょっと無理があったと思った。

ちゃんと最初っから、「食べる?」って聞けたら良かったんだけど。

口に出してしまって後の祭り。

敦君はアハハッなんて笑い出して。

私は恥ずかしい気持ちを、一緒に笑って誤魔化した。


「慣れないもんだね」

「・・・・・・うん」


「はい」ではなくて、頑張って「うん」を選択。

少しでもいいから、些細な部分を頑張って、もっと敦君と親しい感じになりたい。

それは、軽口を叩ける相手とかではなくて、特別なポジションとしての親密さというかなんというか。

もっとちゃんと普通に話せる関係の構築――とでも言ったらいいのか。


「ちょっと腹減ったかも」

「それじゃ、家で何か作・・・・・・るね」


あーーダメだ。

こういうのって、なんだか恥ずかしい。

意識的に意識的にって感じだから、余計にそう思ってしまう。