降りてからの私の立ち位置は、敦君とは結構な近距離。
だからこれでもかというくらい心臓は騒ぎ。
「疲れてない?」
そんな優しい言葉にも、心臓がわさわさ状態で。
私は無言でコクコクと頷いた。
「あ・・・・・・家で何か食べます、る?」
言っててちょっと無理があったと思った。
ちゃんと最初っから、「食べる?」って聞けたら良かったんだけど。
口に出してしまって後の祭り。
敦君はアハハッなんて笑い出して。
私は恥ずかしい気持ちを、一緒に笑って誤魔化した。
「慣れないもんだね」
「・・・・・・うん」
「はい」ではなくて、頑張って「うん」を選択。
少しでもいいから、些細な部分を頑張って、もっと敦君と親しい感じになりたい。
それは、軽口を叩ける相手とかではなくて、特別なポジションとしての親密さというかなんというか。
もっとちゃんと普通に話せる関係の構築――とでも言ったらいいのか。
「ちょっと腹減ったかも」
「それじゃ、家で何か作・・・・・・るね」
あーーダメだ。
こういうのって、なんだか恥ずかしい。
意識的に意識的にって感じだから、余計にそう思ってしまう。


