今まで彼氏にそんなことを言った事がなかった私に、それを言わせちゃうんだから。
大したもんだと思った。
「随分、可愛いこと言うね」
運転席からのその言葉に固まる私。
敦君はフッと笑った後――
「今日は、砂糖とミルクを入れてもらおうかな」
そう言ってエンジンを切った。
遠回しなイエスの返答に、大人の男はやっぱり刺激的。
感心していた私は、敦君からすれば、大分お子ちゃまなレベルなんだろうけど。
まだ一緒に居られるんだと思うと、素直に嬉しかった。
尚輝はいるのかいないのか?
奴の動きを知り得ない私は、居たら敦君との関係をどう説明しようとか考えていて。
敦君が先に車を降りていた事に気付かなかった。
それに気付いたのは、助手席のドアが勝手に開いたからで。
大人の敦君は、車から降りる私を軽くエスコートしてくれた。
なんだか思いっ切り甘やかされているような、その慣れぬ行為にやっぱり私の心臓は正常値ではいられなくなる。
好きになりすぎそうで怖いなんて思うのは、やはり今迄に抱いたことのない感情――。
私は自分が思っている以上に、敦君の事が好きなんだと自覚した。


