でも、始まったばかりだし、やっぱり直ぐには――。
そんな風に開き直り。
そして“ありがとう”と、口にした私。
その後、敦君から向けられたのは、優しい笑み。
この人に優しく微笑まれると、善くも悪くも、どうも調子が狂ってしまう。
「美紗ちゃんさ、もっと我が儘言ってくれてもいいよ」
「え? あ・・・・・・はい」
それは、帰り道――どこか他に寄りたい所はある?
私にそう聞いて来たことに対して、特にないですと言った事を主だって言っているのか?
高速を下りる時に、敦君から突如言われた。
今日いきなり羽田まで付き合ってもらっただけでも、かなりの我が儘に付き合って貰っているように思うんだけれど――。
どれだけの許容度なのか、大人男子の懐の広さが、イマイチ私には解らなかった。
マンション下の駐車場で、少しの荷物を纏め、車から降りようとしていた私は、ふと考え止まってしまった。
このまま今日別れたとして、次に会えるのは、来週の土曜日?
本来ならここで別れてゆっくり休んでもらうのが、思いやりというものなんだろうけど――。


