俺は、話題を変えようと、ふと思い出したことを聞いた。
「そうだ、尚輝、誕生日来月って言ってたけどいつなんだ?」
「俺っすか? 俺は7月20日です。因みに、美紗も一緒っすけど」
「アハハ、ま、当然だろうな」
7月20日か――って。
あれ?
昨日松本が言ってたのって、その日にかかってないか?
「敦さんはいつ?」
「俺? 俺は1月11日」
「ぞろ目?」
「まあ、ぞろ目っちゃぞろ目だな」
すげーなんて尚輝が言っていると、「お待たせしました」と。
彼女がコーヒーを持ってやって来た。
「美紗、敦さんの誕生日、1月11日のゾロ目だって」
「え、すごい!! えーっ? 中條さん、私の好きなアーティストとお誕生日が一緒です!! 交換して下さい」
「お前、バカかよ。交換て無理だろ」
尚輝とそんな会話を続ける彼女は――
「でも、いいなー。同じ日だなんて、羨ましいです」
羨望の眼差しを、俺に向けて来た。
勘違いしては困るが、俺はそのアーティストでもなんでも無い訳で。
同じ誕生日なんてのは、ただの偶然に過ぎない。


